Q5. 卵管水腫(卵管留水腫)だと妊娠しにくい?
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Q.不妊治療の主治医から卵管水腫と診断され、このままでは妊娠しにくいと。どうすれば改善できるのでしょうか。
「不妊治療を受けているのですが、担当の先生から卵管水腫を指摘されました。このままの状態では妊娠しにくいかもしれない、とのことでした。
お金も時間もかけて体外受精を決意しただけに、結局妊娠できなかったとなると、とても残念です。現状を改善する方法はあるのでしょうか?」
A.卵管水腫(卵管留水腫)は不妊の原因になり、流産率と子宮外妊娠率も高くなるリスクがあります。
卵管留水腫とは?
卵管水腫(卵管留水腫/らんかんりゅうすいしゅ)とは、クラミジア感染や子宮内膜症などなんらかの理由で卵管閉塞が生じ、卵管に水が溜まって腫れてしまう疾患のことを指します。女性不妊の原因として卵管閉塞はなんと60%を占めるともいわれています。
卵管には排出される卵子を吸い上げ子宮まで運ぶ「ピックアップ(捕捉)」という役割があるのですが、卵子が精子と出会うために卵管は重要な働きをしています。
ところが、卵管内に癒着が起こるなどして役割を果たせなくなると、卵管内にうまく卵子を取り込むことができなくなる「ピックアップ障害」が生じてしまいます。なぜ妊娠できないのか原因がわからない場合など、このピックアップ障害が起こっている可能性があります。
卵管開口部が完全に塞がれ卵管閉塞が生じると、卵管液が溜まってしまうことによって卵管(膨大部)が拡張した状態になり、卵管留水腫を発症します。主な原因には以下のようなものがあります。
・過去にクラミジアに感染したことがある
・卵巣嚢腫がある
・骨盤内の手術を受けたことがある
・子宮内膜症を発症している
・多嚢胞性卵巣症候群を発症している
卵管留水腫の症状
卵管留水腫の症状として代表的なものは、さらさらした水溶性のおりものが大量に出るというもの。おりものの色は赤褐色や茶褐色が多いという特徴があります。
さらに不正出血や下腹痛、発熱などの症状が出ますが、その多くが無症状であるため、不妊治療などでくわしく検査しない限り発症に気づかないことがほとんどです。
たとえ卵管留水腫が認められたとしても、妊娠を希望していない場合は、とくに治療の必要はありません。
卵管留水腫は不妊だけでなく妊娠率と流産率にも影響が
卵管留水腫によるピックアップ障害については先ほど触れましたが、そのほかにも妊娠および出産に影響を与えることがわかっています。自然妊娠が難しいのであれば、体外受精や顕微授精であれば問題ないのではないかと思われるかもしれません。しかし卵管留水腫があるかたの場合、体外受精による妊娠の成績が悪いことがわかっています。
春木レディースクリニックの公式サイトにはその理由について、下記のように説明されています。
卵管留水腫が存在する方の体外受精の妊娠成績が不良の理由
- 貯留した卵管内容液が胚に対する毒性を持っているという説(胚毒性)
- 子宮内膜の着床能を低下させるという説(内膜毒性)
- 内容液が胚を子宮外へ押し流してしまうという説
無治療の卵管留水腫があった場合は、卵管留水腫のない場合に比べて、胚移植あたりの妊娠率は1/2程度まで低下すると報告されています(両側の場合は1/3以下)。
引用元:春木レディースクリニック公式サイト「卵管留水腫について」(https://haruki-cl.com/basic/hydrosalpinx.html)
不妊治療を受けて念願の妊娠に成功したとしても、卵管留水腫があると流産率と子宮外妊娠率が高いことは事実です。主治医とどのような治療をするかじっくり話し合って、出産をゴールにするためになにを選択すべきかを判断していくことになります。
卵管留水腫の治療法
超音波検査や子宮卵管造影検査の結果によってであることがわかった場合、4種類の治療法のなかから選択することになります。ただし卵管閉塞が起きている部位や重症度などによって、治療法が限定される場合もあります。
・卵管開口術:卵管の癒着部分を切り離したのちに再びつなぎ合わせる治療法
・卵管切除術:卵管間質部と卵管峡部の移行部において子宮から卵管を切断し、卵管自体を摘出する治療法
・卵管クリッピング術:卵管間質部から卵管峡部に金属(またはプラスチック製)のクリップを留置して、卵管内容液が子宮に流入するのを防ぐ治療法
・卵管内容液穿刺吸引術:経腟超音波ガイド下に卵管留水腫を針で刺して、卵管内容液を吸い取って除去する治療法
卵管水腫自体は命に関わる症状ではありませんが、不妊治療法受ける決断をするほど妊娠を望んでいるのであれば、主治医からなんらかの治療が必要であることを提示されるはずです。
もしも通院しているクリニックで相談するだけで不安というのであれば、別のクリニックでセカンドオピニオンを聞いてみるのもひとつの方法です。
https://fujisawatokushukai.jp/department/obgyn/infertility/surgery/04/
https://haruki-cl.com/basic/hydrosalpinx.html