Q4. 抗うつ薬を飲みながら不妊治療をしても大丈夫?

Q.1年前から抗うつ薬を服用中ですが、抗うつ薬を飲みながら不妊治療をしても大丈夫なのでしょうか?

「職場などのストレスが蓄積した結果、1年前にうつ病を発症。現在、症状は落ち着いたものの、抗うつ薬の服用は続けています。

抗うつ薬を飲んでいる場合、不妊治療に何らかの影響はあるのでしょうか? 薬が不要となる時期を待っていると、今度は年齢的な問題で妊娠しなくなりそうで不安です。」

A.抗うつ薬の影響は不妊治療ではなく、妊娠したあとに生じる可能性があります。

うつ病の病態自体が不妊と関連があると考えられる

スウェーデンのコホート研究(病気の発症要因などを推定するため、大勢の人を長期間観察する研究手法のひとつ)で報告されているのは、不妊症とうつ病の関連性です。少し古いデータにはなりますが、2007年1月から2012年12月の約5年間、 23,557名を追跡調査したところ、抗うつ薬を摂取していた女性の妊娠と出生率が低下していた、とする結果が出ました。

ただしうつ病と診断を受けた女性で抗うつ薬を処方をされていない女性も、同様の傾向がみられたのだそうです。このことから、抗うつ薬を使用すること自体が妊娠しにくくさせているのではなく、うつ病そのものが不妊症の要因になっている可能性が示唆されているのです。

投薬によるうつ病の治療中であっても不妊治療は可能であり、問題ないとする情報もたくさんありますが、抗うつ薬(抗うつ剤)すべてで問題がない、というわけではありません。

では、どの抗うつ薬なら大丈夫で、どの抗うつ薬はダメなのでしょうか。

参照元:亀田IVFクリニック幕張公式サイトブログ「体外受精治療と女性のうつ病との関係(スウェーデンコホート:論文紹介) 」

https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_647.html

抗うつ剤(抗うつ薬)には避けたほうがいいものもある

精神科医のホームページ上で抗うつ剤のリスクについて触れているものがありました。田町三田こころみクリニックの公式サイトによれば、妊娠初期には赤ちゃんの奇形リスクを高める可能性があること、妊娠後期には生まれた後の赤ちゃんに薬の影響が残る可能性があることが明示されています。

直接不妊治療に影響を与えるというよりは、妊娠後に問題が発生する場合があるとの解説でした。妊娠初期の奇形率を高めるとしている抗うつ薬について、下記のように説明されています。

現在のところ、奇形率を高める可能性が報告されているのは、SSRIのパキシルと、三環系抗うつ剤(アモキサンを除く)・四環系抗うつ剤(大量使用時)のみになっています。

それ以外のSSRI、SNRI、NaSSAなどの抗うつ剤に関しては、奇形との特別な関連性はないと考えられています。

引用元:田町三田こころみクリニック公式サイトブログ「抗うつ剤の妊娠への影響とは?」(https://cocoromi-mental.jp/cocoromi-ms/psychiatry-medicine/antidepressant/dep-pregnancy/)

田町三田こころみクリニックの公式サイトには、上記のほかにも「妊娠への影響に注意が必要な抗うつ剤」の評価を表にまとめてあるものが掲載されていますので、ご自身が服用している抗うつ薬について確認したいというかたは、確認してみてください。

参照元:田町三田こころみクリニック公式サイトブログ「抗うつ剤の妊娠への影響とは?」

https://cocoromi-mental.jp/cocoromi-ms/psychiatry-medicine/antidepressant/dep-pregnancy/

精神科医に「妊娠を望んでいる」ことを真っ先に報告する

抗うつ薬のうち多くの薬は妊娠に大きな問題はないとされていますが、100%安全と言い切れない薬もあります。妊娠を望む場合、赤ちゃんに薬の影響が出るのは避けたいと思うのは当然のことです。

ただ、いきなり抗うつ薬すべてをやめてしまうほうがリスクが高い、と考える医師がほとんどです。妊娠を考えているかたは、精神科医に相談して計画的な妊娠を目指したり、服用する抗うつ薬を漢方に切り替えたりして、メンタルヘルスの維持をしていく必要があります。

妊娠も出産も心身ともに大きな負担を伴うものですので、まずはご自身の精神状態の安定がもっとも重要になります。

うつ病の治療中に結婚、もしくはパートナーを得て、妊娠を望むようになることは十分に考えられます。年齢の問題などで、うつ病の完治を待っていられないというケースも多々あるでしょう。

このようなときにもっともしてはいけないことは、「自己判断で薬をやめてしまう」こと。そしていちばん優先すべきことは、精神科の主治医に「妊娠を希望している」ことを報告することです。

自然妊娠にしろ、不妊治療で妊娠を目指す場合にしろ、自分の思い込みによる判断をすべきではありません。どの薬であれば妊娠に悪影響がないか、胎児に問題が生じないかは精神科医に判断してもらうようにしてください。