Q2. 子宮筋腫を治したほうが妊娠しやすくなる?

Q.軽度の子宮筋腫です。妊娠を望む場合は手術などの治療を受けたほうが良いのでしょうか?

「数年前に不正出血が見られたので婦人科で検査してもらったところ、子宮筋腫が発見されました。

重症ではないとのことなので、特に治療をせずに半年に一度の経過観察のみ続けています。今後、妊娠を希望する場合には子宮筋腫を治すべきなのでしょうか? その場合、治療法は手術になるのでしょうか?」

A.30歳以上の女性の約30%に子宮筋腫はみられますが、タイプや大きさによって対応が変わります。

子宮筋腫のタイプはおもに3種類ある

子宮筋腫はがんになる恐れのない良性の主要ですが、30歳以上の女性の20~30%に子宮筋腫があるとされています。小さなものからこぶし大の大きなものまで、その大きさはひとそれぞれ。卵巣から分泌される女性ホルモンによって筋腫は大きくなりますが、閉経すると小さくなっていきます。子宮筋腫ができる場所によって次の3つの種類に分かれます。

まず子宮の外側にできるのが、漿膜化(しょうまくか)筋腫。そして子宮の筋層の中に筋腫が生じるタイプが筋層内(きんそうない)筋腫。3つ目は、子宮の内側にできてしまう粘膜下(ねんまくか)筋腫です。

これらのうち2つめと3つめの筋層内筋腫と粘膜下筋腫は、不妊の原因となることがあります。質問者の子宮筋腫がどのタイプの筋腫なのかわかりませんが、妊娠を望んでいるなら主治医と治療の必要性を検討する必要があります。超音波やMRI、子宮鏡などによる検査で診断できます。

筋腫の大きさや場所によって妊娠しにくくなる場合も

不妊治療を検討しているかたや自然妊娠を望んでいるかたは、子宮筋腫によって妊娠しづらくなるのではないかという不安を感じているかもしれません。40代女性の場合は40%の人に子宮筋腫があるとされていますので、不妊治療にかけているというかたにとってはとくに、子宮筋腫の悪影響が気になるところです。

専門家によれば、子宮筋腫が大きかったり、子宮の内側(粘膜下)に筋腫ができてしまったりすると、妊娠しづらくなる可能性があるといいます。また大きな筋腫が子宮のしたのほうにできている場合は、筋腫が邪魔になって分娩の妨げになることから、帝王切開による出産になるケースもあるそうです。

筋腫の大きさ的にも、筋腫の種類的にもリスクが低ければ手術をして摘出することができますが、血管がたくさん通っている場所でもあるため、手術の判断は慎重に行なわれます。

本当にその子宮筋腫が妊娠のさまたげになるのか、手術によるリスクがどの程度あるのか、担当医からの説明を十分に受けてから、手術する、しないの判断をすることになります。

なお、たとえ筋腫を摘出したとしても、小さな筋腫が残って再発することもあるので、その点も踏まえて判断するようにしてください。

参照元:産婦人科オンラインジャーナル「子宮筋腫が妊娠に及ぼす影響について」https://journal.obstetrics.jp/2019/02/27/fibroma/

厚生労働省「治療の難しい不妊症のためのガイドブック/子宮筋腫の人の不妊症」(https://www.gynecology-htu.jp/refractory/dl//hunin_guide2.pdf

子宮筋腫の治療は手術か投薬

子宮筋腫の治療法には手術によるものと、投薬によるものがありますが、主な治療法は手術です。ただし、筋腫が小さく無症状の場合は、治療の必要はありません。

手術の判断は子宮の大きさや筋腫のある場所、出産を望むかどうかなど複合的な要素を勘案して決められますが、手術の方法は子宮を全部取ってしまう「子宮全摘術」と、筋腫のみを取る「筋腫核出術」があります。若い女性であれば子宮全摘出には抵抗があると思いますが、筋腫の摘出時に出血が多くなってしまうというリスクもあります。※ここまで

投薬によって筋腫を小さくすることはできますが、使用中は更年期のような症状が生じるうえ、薬の使用をやめると筋腫はもとに戻ってしまいます。

ピルを服用すれば筋腫の拡大を止めることができますが、やはり服用をやめれば症状は戻ります。結果として、妊娠を望む患者さんにおいては、手術を選択する可能性が高まります。

子宮筋腫摘出手術の方法は?

子宮筋腫の摘出手術には、大きく分けて2種類の手術方法があります。

まずひとつ目は、「子宮鏡手術」といって、膣より子宮の中に内視鏡を入れて子宮筋腫を摘出する方法です。子宮の内側に筋腫ができる、おもに粘膜下筋腫に対して行なわれる手術法です。

もうひとつは、「腹腔鏡手術」と「腹腔鏡手術」という手術法で、子宮鏡手術ができない場合や子宮の外側から子宮筋腫を摘出する方法です。子宮鏡手術が行えない、子宮の内側にあまり突出していない粘膜下筋腫や筋層内筋腫、漿膜化(しょうまくか)筋腫に対して行なわれます。

腹腔鏡手術・腹腔鏡手術の場合は、手術時の出血量を減らすために術前にホルモン療法、すなわち女性ホルモンを3か月間程度抑えることによって、出血量をコントロールしてから手術を受けます。

参照元:公益財団法人日本産婦人科学会「子宮筋腫」https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=8