妊娠確率を高めてくれる「タイミング法」
排卵日をなるべく正確に予測して、受精をより確実にする方法です
「タイミング法」とはその名の通り、最も妊娠しやすいタイミングを予測して自然妊娠の確率を高める方法です。自分で基礎体温表をつけて排卵日を予測する方法や、病院で超音波検査や血液検査などを行って、排卵日をより正確に特定する方法があります。

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タイミング式
超音波や血液検査をおこなって「妊娠しやすい日」を特定します
妊娠するには月に1度の排卵日に合わせてセックスをすることが重要です。
排卵日を予測するには、毎朝基礎体温を測り、月経周期をチェックするのが手軽な方法です。が、排卵日は体調によって変わりやすく、また基礎体温表をのみでは排卵日を特定することは難しいです。
そこで病院で超音波検査や血液検査などを受け、子宮内膜の状態やホルモンの分泌状態をチェックすることで、排卵日をより正確に特定するのがタイミング法です。
基礎体温でおよその排卵時期を予測し、排卵日前に病院を受診して正確な排卵日を特定。医師に指導された「妊娠しやすい日」にセックスして自然妊娠をめざします。
こんなケースの不妊に効果的 | ・不妊検査で特に大きな問題が見あたらない ・女性の年齢が35歳以下で自然妊娠力が高い ・フーナーテストの結果がよく、精子がしっかり子宮にたどり着いている ・抗精子抗体ではない |
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平均治療費用 | 約¥3,000(保険適用)~ 約¥20,000(自由診療) ※不妊治療ナビ編集部調べ |
タイミング法の流れ
基礎体温表をもとに大体の排卵日を予測する
日々つけている基礎体温のグラフをもとに、おおよその排卵時期を予測します。通常、低温期の最終日から体温上昇期の間の数日が排卵日とされています。ちなみに、黄体の自妙は14日間なので、仮に生理周期が規則的な28日サイクルであった場合、生理周期の14日目が排卵日ということになります。
卵胞の直径を図って正確な排卵日を予測する
基礎体温表による排卵周期の予測にしたがい、排卵日が近づいてきたと想定できたら経膣超音波検査にて正確な排卵日を予測します。卵胞の直径が12mmに達していた場合、卵は1日につき2mmほど成長します。約20mmになった時点で排卵が訪れるので、逆算すれば正確な排卵日を予測することが可能です。
排卵検査薬をもとにタイミング法を行なう場合の注意点
排卵検査薬を使用すれば、自宅でも排卵日を予測することができます。排卵検査薬とは、尿に含まれる黄体ホルモンの量を感知することで排卵のタイミングを知らせてくれるもの。排卵か近づくにつれ、薄い線から徐々に濃い線へと変わっていきます。明確に濃い線になったときから10~12時間後に排卵が行なわれますが、ここでタイミング法を行なったとしても手遅れの可能性があるので注意してください。
検査時間と夫婦生活とのタイムラグによって、タイミング法を行なった時点では受精可能時間を過ぎている可能性があるかです。排卵検査薬をもとにタイミング法を実施する場合には、検査薬が薄い色を示したとき(薄い陽性を示したとき)を狙うようにしましょう。
頸管粘液を確認したら夫婦生活を
子宮頸管の中は、普段は細菌の侵入等を防ぐために乾燥ぎみになっています。ところが排卵が近づくと、精子の通りを良くするために、透明な頸管粘液の分泌を始めます。この粘液の分泌こそ、女性の体が精子の受け入れ体勢に入り始めたことを示すシグナルでもあるので、このタイミングで夫婦生活を持っておいたほうが良いでしょう。
卵胞が20mmの直前まで成長した段階で夫婦生活
精子は、女性の体内であれば数日間は生存しています。よって受精の確率を上げるためには、的確なタイミングを狙って精子を送り込むのでははなく、精子を先に送り込んで卵子のタイミングを待つ、という形を採ったほうが得策です。先に精子を送りこタイミングは、卵胞が約20mm直前まで成長した段階です。
夫婦生活の翌日に排卵確認とフーナーテスト
夫婦生活を営んだ翌日、病院で超音波による排卵確認の検査を行ないます。この検査により、前日の夫婦生活のタイミングが合っていたかどうかを確認することができます。あわせて頸管粘液を採取して、活発な精子がしっかりと侵入しているかをチェックします。このチェックのことをフーナーテストと言います。
フーナーテストから分かること
フーナーテストでチェックされるのは、精子が侵入するための良質な頸管粘液が分泌されているかどうかという点と、元気な精子がたくさん侵入してきたかどうかという点。これらのチェックを経て分かることは、タイミング法による自然妊娠が可能かどうかということです。なお頸管粘液は排卵の直後から急速に減少するため、場合によってはフーナーテストの好機を逃してしまうこともあります。逃した場合には、確実にチェックができるまでタイミング法を繰り返しましょう。チェックの結果、一度でも良好な結果が得られれば、タイミング法による自然妊娠の確率は高いと考えて良いでしょう。また精子に異常がないにも関わらず繰り返しフーナーテストの結果が不良な場合には、女性に抗精子抗体がないかどうかを確認したほうが良いでしょう。
hCGによる妊娠判定
月経予定日ごろ、女性の体内で分泌されるホルモンであるhCGという物質の分泌量を計ることにより、初期妊娠の判定を行なうことができます。hCGは母体と赤ちゃんをつなぐ絨毛の細胞から作られています。妊娠していない女性の体内で生産されることはない成分のため、その量がある程度確認できた時点で、初期妊娠の成立と判定されます。
基礎体温について
基礎体温から女性の体に関するさまざまな情報がわかります
基礎体温とは、1日のうちで最も体が安静な状態の時間に測る体温のことです。朝起き上がる前に、毎日同じ時間に布団の中で体を動かさずに測るのが一般的です。
女性の体は生理直前から排卵前までは体温が低くなり(低温期)、排卵すると急激に下がり、その後は体温が高くなる(高温期)というバイオリズムをくり返しています。
基礎体温を記録することでそうした体温の変化をチェックし、排卵日を見きわめたり、子宮や卵巣が正常に働いているか、妊娠しているかどうかなどさまざまな情報を知ることができます。
基礎体温で分かること
- 生理が来る時期
- 卵巣の状態
- 子宮の状態
- 妊娠の有無
基礎体温チェック表の書き方
基礎体温は脇の下にさしこんで測る一般の体温計より細かく体温を測るため、目盛りの細かい専用の基礎体温表に毎日記録していきます。
できるだけ毎日同じ時間に、目覚めてすぐ体を動かさずに測るのが基本ルールです。夜更かししたり体調を崩したりするだけで体温は変動してしまうので、その時は備考欄にメモしておくといいです。病院を受診する時は、最低3ヶ月分の体温表を持参するのがおすすめです。
忘れないで!基礎体温のチェックのルール
- 朝起きてすぐ、布団の中で体を動かさずに測る
- 毎日同じ時間に測る
- 専用の基礎体温計を使う
- 体調、セックス日などは備考欄にメモする
- 測り忘れてもOK。長く続けることが一番大切
こんな方は注意
- 低温期と高温期に分かれていない体温に大きな変化がない場合、排卵が正常に行われていない可能性があります。
- 高温期が短い高温期は通常10日以上続くものですが、それより短い場合は卵子の成長が未熟だったり、卵巣の機能が低下している可能性があります。
- 高温期が長い高温期が通常より長く続いた場合は妊娠が考えられますが、子宮外妊娠や流産をした場合も高温期が続くことがありますので、注意が必要です。
- 低温期が長い卵胞が十分に成長して排卵するまでに時間がかかってしまう卵胞発育不全の疑いがあります。高温期に移行しない場合は排卵していない可能性もあります。

タイミング法の妊娠率
排卵日付近で夫婦生活の機会を持てば約20%の確率で妊娠
不妊症(1年以上の夫婦生活を通じても妊娠に至らない症状)の場合を除き、一般に排卵日周辺で夫婦生活を送ると、約20%の確率で妊娠するとされています。タイミング法を試みた初月に妊娠が成立しなかったとしても、引き続き機会を逃さずにタイミング法を続ければ、1年後には90%の女性が妊娠すると言われています。ただし毎月タイミング通りに夫婦生活を送ることができないカップルの存在も考慮すると、実際に1年後に妊娠する女性は、全体の約80%とされています。
そうではない約20%の夫婦がもう1年間チャレンジしても2年間で約90%
1年間の夫婦生活を持つことで実際に妊娠に至る女性の比率は、約80%と説明しました。では、さらに1年延長して2年間の夫婦生活ののちの妊娠率はどれくらいでしょう? 2年間の夫婦生活を経て妊娠する確率は、実に90%。1年延長したにも関わらず、全体の妊娠率は僅か10%しか伸びない、ということです。この結果から分かることは、妊娠するに問題のない体の人は、1年の夫婦生活だけでほぼ妊娠するということ。そして、妊娠するに問題のある体の人は、何らかの手を打たなければなかなか妊娠しないということです。
無治療のままの自然妊娠率は、わずか3%
タイミング法によって妊娠しなかった女性のうち、機能性不妊(原因不明の不妊)と診断されたカップルが無治療のまま夫婦生活を続けた場合、そのうちの60%の女性は3年以内に自然妊娠するとの報告があります。一見高い確率のようにも見えますが、一周期あたりの妊娠率は僅か3%とも計算されています。不妊症でない女性の一周期あたりの妊娠率が20%であることと比較すると、極めて低い数字です。夫婦で不妊治療の検討を始めるタイミングかも知れません。
タイミング法の有効回数
治療効果が期待できるされるのは6回~12回
タイミング法による治療効果が期待できるのは、一般に6~12回までとされています。換言すれば、12回のタイミング法を試みたにも関わらず妊娠しない場合、何らかの不妊原因が隠れている可能性がある、ということです。12回の試みを経て妊娠しない場合には、一度ご夫婦で徹底的な原因検査をしてみたほうが良いでしょう。そのうえで不妊原因が確認された場合には、医師を交えて夫婦で以後の選択を検討してみましょう。引き続きタイミング法を実践するか、人工授精にステップアップするか、または別の道を選ぶか。夫婦の価値観、人生観に基づき、かつ他者の意見にもしっかりと耳を傾け、夫婦で納得できる結論を出してください。
タイミング式が向いてないケース
子宮筋腫や子宮内膜症など婦人科系のトラブルがある場合
受精卵の着床を妨げることがありますので、必要に応じて投薬や手術を受け、人工授精や体外受精を検討します。
卵管や卵管采に詰まりや癒着がある場合
受精の妨げとなるため、腹腔鏡検査などで卵管の通りを改善し、それでも改善しない場合は体外受精に進みます。
フーナーテストの結果が良くなかった場合
卵管頸管粘液不全や抗精子抗体症、男性不妊が疑われ、人工授精や体外受精を視野に入れます。
男性不妊の場合
精子にトラブルが起きている場合や、性機能障害の場合は自然妊娠が難しいため、人工授精や体外受精、顕微授精に進みます。
成功させる一番いい時は!
排卵した卵子が卵管内で元気でいる時間は、およそ1日。対して精子は射精して約3日間は元気でいるといわれています。そのためタイミング法で排卵日が特定できたら、排卵日当日よりも1~2日前にセックスして、精子が卵管内で卵子を待っている状態が良いタイミングだといえそうです。