保険診療と併用できる「不妊治療の先進医療」について
保険診療と併用できる「不妊治療の先進医療」とは?
不妊治療が保険適用化したものの、自費診療と併用する混合診療ができず、逆に費用負担増となる…。このような課題に対応できるのが保険診療と併用できる「不妊治療の先進医療」です。概要や種類、自治体独自の助成制度などを紹介します。
目次
混合診療OK!不妊治療の先進医療とは?
自費診療と違って、保険診療との混合診療が可能な先進医療は、現在は保険適応外の治療ではあるものの、将来的に保険導入することを前提にした医療技術です。先進医療の概要とそのメリットについてみていきましょう。
先進医療については、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」として、厚生労働大臣が定める「評価療養」の1つとされています」と厚生労働省のホームページに記載されています。少し難しい言葉で書かれていますが、日本の医療制度の基本を知ると理解が深まるかと思います。
まず、日本で保険適用ができる(健康保険証の提示で一部の自己負担で治療を受けられる)治療は、一定の有効性と安全性が評価されているものに限定されています。逆に、まだ評価できないものに関しては自費診療、つまり保険が使えないわけです。
また、保険診療と自費診療の併用を認めていないため、双方を合わせた診療(混合診療)を受ける場合は、保険診療可能なものも含めた全額が自己負担となります。しかし、それは困っている方へが医療を受けられなくなる弊害を生んでしまいます。そこで、まだ保険適用できるまでの有効性と安全性があるまでは評価しきれないが、それを前提として評価段階にある先進医療に関しては、混合診療OKとしているのです。
つまり、不妊治療など高額になりがちな治療が必要にもかかわらず、費用の問題などで治療をためらっている方のための新しい医療制度の形といえるでしょう。
先進医療を受けるメリットとは?
先進医療を受けるメリットは、「保険診療との混合診療が可能であること」と「有効性と安全性が高いとされる治療を受けられること」の2つあります。
前述した内容とかぶりますが、「保険診療との混合診療が可能であること」によって、不妊治療の費用負担を最小限に抑えられます。
- 保険診療にかかる治療→自己負担3割
- 先進医療にかかる治療→全額自己負担
繰り返しますが、自費診療と保険診療を組み合わせた場合は、本来自己負担しなくてよいはずの保険診療も含めたすべての治療費が自己負担となります。つまり、高額な費用を払って不妊治療を受けなくてはいけないわけです。
また、「有効性と安全性が高いとされる治療を受けられること」とは、自費診療と比較すると国がある程度、有効性と安全性を認めた治療が受けられるということなので、安心感につながるかもしれません。
先進医療の種類
不妊治療における先進医療で有名なものとして「タイムラプス」があります。不妊治療における先進医療を検討している方であれば、名前は聞いたことがあるかもしれませんね。これは、専用カメラで受精卵が順調に育っているかを継続的に評価することを目的とした先進医療です。
先進医療は、先進医療Aと先進医療Bに大きく分かれます。Aは科学的根拠などに基づき保険適用が強く推奨されたものであり、Bは推奨とされています。ちなみにCは「実施を考慮」中、つまり保険適用は現段階では見送りされる治療ですのでご注意ください。A、B、Cの推奨度は日本生殖医学会が作成した「生殖医療ガイドライン」によるものです。
では、不妊治療における先進医療Aと先進医療Bに何が該当するかをご紹介します。
「先進医療A」と「先進医療B」
2022年5月1日現在、保険適用が強く推奨される「先進医療A」として告示されている治療技術および検査法は以下の通りです。
- 子宮内膜刺激法(通称、SEET法)
- タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
- 子宮内膜擦過術(通称、内膜スクラッチ法)
- ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(通称、PICSI法)
- 子宮内膜受容能検査(通称、ERA)法
- 子宮内細菌叢検査(通称、EMMA/ALICE法)
- 強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別法(通称、IMSI法)
- 二段階胚移植法
なお、保険適用が推奨されている「先進医療B」は現時点ではありません。
審議中もしくは審議予定の先進医療
現段階では、先進医療に適用するかどうかを審議している、もしくは審議が予定されている技術についてもみておきましょう。
- 子宮内フローラ検査
- 着床前胚異数性検査(大阪大学医学部附属病院)
- 着床前胚異数性検査(徳島大学病院)
- 不妊症患者に対するタクロリムス投与療法
※今後、先進医療適用となる可能性があるので頭の片隅においていてもいいかもしれません。
先進医療はどうしたら受けられる?
先進医療を受ける際も、一般的な保険診療の治療を受ける際も窓口で、被保険者証を提出するという基本的な流れは変わりません。ただし、保険適用とはならないため、患者自らがそれも理解した上で治療を希望することと、医師が治療の必要性と合理性を認めなくてはいけません。
先進医療を実施している医療機関
金額は治療1回につき15万円までで、特定不妊治療が終了した年度の前年度以降の治療を対象として助成されます。ただし、特定不妊治療の過程にあるものとされているため、男性不妊治療だけでの申請は認められません。同時に申請する特定不妊治療が助成されることが前提です。
これらの制度は、必要に応じて改正されることがあります。したがって、最新の情報をチェックすることが大切です。
【参考】
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/kosodate/josei/funin/top.html
→ 東京都特定不妊治療費助成の概要