Q6. 受精卵（胚）のグレードが低いと凍結や移植ができない?

Q.受精卵のグレードが低くて、凍結できる胚はありませんでした。何に問題があるのでしょう?

「初めての体外受精に臨むため採卵を行ないました。そして卵子はたくさん採れたのですが、受精卵のグレードが低いと言われ、移植や凍結の対象となる胚は得られませんでした。

受精卵のグレードが低く私の卵子では妊娠できないということなのでしょうか? また、どのような胚であれば移植が可能なのでしょうか?」

A.グレードの低い胚（受精卵）は妊娠率が下がるため移植に適さないと判断するクリニックが多いのは事実です。

受精卵のグレードと妊娠率には相関関係がある

受精卵のグレードが低いとのことですが、初めての体外受精とのことなので原因についてはなんとも言えません。ただ周期によって卵子の状態は変化するので、3ヶ月ほど卵巣を休ませたのちに、再度受精卵のグレードを確認したうえで体外受精を試みる、ということになります。

受精卵のグレードが低くなる要因としてよく挙げられるのが、年齢的な問題。母体の年齢が上がれば上がるほど、卵子の質が低下するというのは広く知られていることです。卵子の質が高ければ、細胞数が多い受精卵が育ち胚が密な状態で分割していきます。

ところが、卵子の質が低いと胚の分割がうまくいかず、成長が止まってしまいます。これは細胞の染色体異常が原因と考えられており、成長しなかった胚の70〜90%に染色体異常が認められたという報告もあります。

そのほかに卵子の質に問題がない場合は精子の状態が悪いという可能性もあるので、精子のより良好な精子をピックアップできる器材を導入しているクリニックもあります。

参照元：famione(ファミワン)公式サイト「胚のグレードはどう決まる？分割が止まる原因とは？」

https://famione.com/column/sakura6/

正常受精＋正常分割した胚のみが移植の対象となる

移植が可能な胚は、正常受精と正常分割がなされている受精卵です。正常受精（2PN）がなされたかどうかの判定は、受精卵の中に精子と卵子に由来する2つの核が確認できるか否かで決定します。

核が1個しかない、もしくは3個見えるという場合は異常受精となり、移植の対象にはなりません。また正常受精したのちに、正常に分割しない胚もあります。正常受精の後、正常分割している胚のみが移植の対象となります。

低いグレードでも妊娠・出産までいけることもなくはありませんが、確率的に染色体異常に起因する胚分割停止や異常分割が生じる可能性が高く、費用をかけて体外受精をしても妊娠できなかったり、流産してしまったりするリスクがあります。そのためグレード評価の低い胚は移植しないという判断をされることが多いのです。

参照元：加藤レディスクリニック公式サイト「培養室のご案内/コラム/体外受精(C-IVF)と顕微授精(ICSI)について」

https://www.towako-kato.com/embryo/column.html

グレードの良い胚だけを選んで移植する

複数の正常の胚が生まれた場合、より妊娠率の高いと考えられる質の良い胚を選んで移植することになります。

初期胚のグレードはヴィーク分類で1～5の5段階で評価され、1がいちばん高い評価、5がいちばん低い評価ということになります。初期胚からさらに分割が進むと胚盤胞のグレードをガードナー分類によって評価します。

ガードナー分類は胚盤胞の形態的な評価ですが、クリニックによっては母体の年齢や成長スピードなどの指標を加味した独自のグレード評価をする場合もあります。

ただし、受精胚のグレードはあくまでの妊娠のしやすさを示す指標でしかないため、グレードの低い受精胚を移植して妊娠しても直接胎児に影響が出るものではありません。

参考までに、亀田IVFクリニック幕張の胚盤胞グレード別の臨床妊娠率（開院～2021年12月）を例に挙げておきます。

年齢的要素と胚盤胞のグレードを掛け合わせると、グレードが高く年齢が若いという好条件下の妊娠率と、グレードが低く高年齢という条件の妊娠率にこれだけの差が出てしまうことがおわかりだと思います。

ただし、グレードの低い胚を移植して妊娠したとしても、生まれてくる子供に一切の影響はありませんので、その点は心配なさらなくても大丈夫だと思います。